院長の日記
2003.09.27 101回目の手術
先日新聞を見て驚いたのは、病院での手術による死亡事故の記事のことでした。
3人の医師が手術をしたのですが、一人が助手に1回ついただけで、二人は見たことがないというレベルで手術に挑んでいたのです。
全く無茶としか言いようがありません。
医者は卒業後医師免許があるため、名目上は10年仕事をしている医師と同じく「医師、先生」などと呼ばれることになるのですが、技術的には月とすっぽん、ピンキリの差があるわけです。そして浅いキャリアであるにもかかわらず、社会的にある程度認められた地位についてしまい、「先生」と呼ばれるものだから、どうしても勘違いしてしまう医者もいるのです。そして、上司である先生の「技術」を見ずに、「尊大な態度」を学んでしまう医者もいると思います。落語でも「者のつく商売、つまり医者、役者、芸者、易者は態度がでかい」と言われています。
また、医者も人間ですから、いろんな医師がいます。
性格的に医師向きな人もおられれば、そうでない?人もいると思います。
また、どんな哲学を持っているかも大きな要素です。技術云々を問う前に、人間性がすごく大切です。どういう理由、目的で医者になったか、です。
外科系の医師が手術を覚えるためには、やはり見ることと、自分で手術を行うことが不可欠です。手術の介助に付くといっても、そこでも術者の技術によって、すばらしい手術を見ることができるのか、???な手術を見ることになるのかでも、その医師の運命が分かれることになっていきます。
また、何回手術を見れば自分でできるようになるか、ということも一概には言えません。何回見ても自分ではできないという医師もいるかもしれませんし、数回見れば理解できるくらいの実力を持った医師もおられると思います。もちろんそれくらいのレベルに達するには、解剖やかなりの勉強、努力が必要ですが、私は生来持っているその人のセンスもかなり影響すると思っています。そして、宮本武蔵ではなくとも自分のその時点での技術レベルを把握することが重要です。
今回の事故では、関係した医師たちは、自分の技術を高いのだと思い違いをして、かつ手術を甘く見ていたのでしょうか。ブラックジャックのマンガや昔のテレビドラマ「振り返れば奴がいる(だったと思います)」などでは、初めての経験に近い医者がその場で指示してもらいながら手術を行い成功するというストーリーもありましたが、これは非現実的な物語なのです。
最近の掲示板で、私がその手術を得意にしているのかどうかと聞かれることがあるのですが、正直言って私としては言いにくい回答です。
「得意です」と言うと、タカビーであるとか、自信過剰のように聞こえそうで私自身がいやなのです。反対に、「得意ではありません」というと、遠慮しているのか、謙遜しているのか、本当に自信がないのか色々な受け取り方がでてきます。
アメリカ人などの外国の人は、自信を持って意思表示ができるのでしょうけど、この感覚は、私の中の日本人的な欠点なのでしょう。
別の聞き方として、「その手術を何例くらい経験されていますか」というのもあります。
残念ながら、この質問も、ある程度の参考にはなりますが、絶対的な決め手にはならないと思っています。なぜならその手術の結果や質が、この数字には入ってこないからです。確かに経験豊富ですばらしい手術をされる先生もおられますが、中には、1000例以上していても、ほとんどが二次修正を必要とする手術であるとすると、考え直さないといけませんし、100例の症例程度といっても全例すばらしい手術をされている方もおられると思うからです。
これは日頃からその手術についてどれくらい考えているかということと、先ほどいいました「センス」が関係していると思います。
どの医者に手術をしてもらうのがいいか?という一般の方々の重大な問題には、なかなかいい回答がでません。
何かいい目安になるものがあればいいのですが、非常に多くのケースがあるため、すぐには見つからないのです。
強いて目安にするならば、「相性」でしょうか。手術の技量はわからずとも相談しやすければ、対応できるはずです。
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