院長の日記
2003.10.03 話し相手に合わせるな?
私の今の治療方針の原点は、卒後すぐに勤めた病院の環境が影響しています。
大学で研究ということよりも、実戦で仕事をしたかったので大学の関連施設である総合病院の整形外科に入局しました。
その整形外科は外傷系の治療が進んでおり、院長が救急医療に積極的に取り組んでいたので、「臨床最前線24時間」の様な病院でした。
そして、その病院の場所ですが、市内の繁華街にあり、飲み屋などの飲食店やサービス業の店も数多くあり、さらに近くに組事務所もありました。(^^;)
入局後、救急当直も行うことになったときに、一番心配だったのは、重症患者の搬入はもちろんですが、ちょっと柄の悪い様な人とか酔っぱらい、当り屋との対応でした。
病気の内容として重症の患者様は、諸先輩の先生方についていただくことができるので、案外何とかなるのですが、卒後すぐの人間にとっては、社会勉強、人生勉強をほとんどしていないので、この人生の蔭の部分にはまった方々との対応は全く予想がつかなかったからです。
その時に、私がどう対応したらよいかをある先輩の先生に聞いたとき、その先生は、「相手の人と同じトーンにあわせなければ大丈夫。」といってくれました。
ちょっと聞くと、話相手に合わせるなというのですから、逆効果のように聞こえます。どういう意味かというと、相手がいわれのない文句を言ってきた時に、同じレベルで「売り言葉に買い言葉」のごとく言い返すと、どんどんテンションが上がっていき危険な状態になる。その時に、こちらとしてはより冷静に、ちゃんと診療を行い優しく話をすれば、相手のトーンも少しずつ下がっていく。
たとえ下がらなくても、暴力沙汰にはなりにくいし、一晩がんばれば翌日院長をはじめたくさんの医師が出てくるから、相手が無理な文句を言っているのであれば分が悪いので必ずテンションは下がる、という意味です。
それから、夜中の診療ではいろんな経験をします。
発熱で来られた方に、いつから症状があるのか聞くと、中には1週間~10日くらい前からといわれる方もいます。いろんな検査もできるので、これで良くならないようなら早めに昼間の時に来てください、とお願いしながら処方せんを書くことも少なくありません。「何でもっと早く来ないのだ!」とたとえ心では思っても、怒鳴ってはいけません。
今でも患者様との話では、できるだけ穏やかに話をできるように心掛けています。
私の知っている範囲でも、ちょっと気の短い、怒りん坊の先生もいますが、こちらが怒ってはいけないと思います。職人気質の先生もおられますが、やはり相手のいる仕事ですから、相手のことも考えることが大切です。
「マーフィーの法則」で有名なマーフィーの本にも、「相手の対応は、自分の相手に対する態度を鏡に移して見ているのと同じである。」と書いてあります。私は、相手の方のトーンが高いということは、自分が上げているのだと思い、下げるように努めているともいえます。
昔、元巨人の江川卓さんが規約の盲点をついて、阪神からのトレードで巨人に入ったとき、記者とのインタビューで「もっと落ち着いて、冷静になってください。」と、冷静に話をしていたことを思い出しました。
江川さんの場合は計算された様な感じがしますが、あの冷静さ、あの境地ですね。
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