院長の日記
2008.05.12 不思善 不思悪
前回は利己主義をテーマに書きましたが、そもそも「自分のため」というのは自然な発想です。
生物は基本的に自分の生存を優先させています。
ただ人間の世界では、「度」を越しているのが問題なんです。
「人間」という言葉を見てもわかるように、生物学的にヒトである生き物が「人間」であるため人は「人と人の間」にいなければなりません。ということは、自分の周りに他の人たちが存在する共存共栄の世界であるはずです。
だから、周りの人たちの不利益をなんとも思わずに自分の短絡的利益だけを考えるということは、共存共栄を難しくします。
ある程度は御互い様という歩み寄りが必要になってきます。
今「度」という単位?を書きましたが、この「度」はそのときその時によって変化します。
この状況によって変化する「度」に対応して行動することが「空気を読む」になるのでしょうね。
今日は「相対的」というテーマです。
般若心経にも「不垢不浄」「不増不減」など形容詞による比較を否定しています。
他にも「善」と「悪」、「良い」と「悪い」など日常によく使っていますね。
このような形容詞の差は本当に有るのでしょうか。
これはその人がその人の立場で考えていることによって決まってしまいます。
だから絶対的なものじゃありません。
たとえば、昔のアメリカ映画です。ハリウッド全盛の頃にはスターを使っての西部劇が数多く作られました。
私もジョン・ウェインやゲーリー・クーパーは大好きです。
その時に、まず設定で決まっていたのが「騎兵隊に象徴される白人側」は「善」で「インディアン(先住民族)」は「悪」というパターンでした。(もっとも、映画のほうでも、1960年くらいからは、あまり先住民族を悪者扱いにしない映画も作られるようになってきました。)
しかし、そもそも先に住んでいたのは先住民族の方たちです。後からヨーロッパの人たちが押し寄せてきた。
これはもしも先住民族の立場からストーリーを作ったとしたら、まさにHGウェルズの宇宙戦争と同じじゃないでしょうか。
先住民族が人類で、襲撃するエイリアンがヨーロッパから来た人々です。
マヤ文明を滅ぼしたスペイン軍なんて、そのものじゃないでしょうか。
見る立場が変わればこうも違うもんなんです。
人間の立場だって地球全体から見れば他の生物と同じというか、そんなに偉いもんじゃないよという発想が昔の小説にありました。
スイフトの「ガリバー旅行記」です。
これは人間の立場を他の生物が見た場合にどうなるかというメッセージですね。
小さい人間から見れば人類はモンスターですし、巨人から見れば人間も小さな虫と同じです。
また知性があるからといっても、ひょっとしたら馬のほうが賢いかもしれません。多分そうでしょうね。
さらに空中に住むほどの科学を持っている人間の危うさも描いています。
やはり現代でも愛読されるような古典はちゃんとメッセージを持っているのですね。
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